愛のない部屋
寝返りをうった篠崎と目が合う。
眠そうに目を擦ってる。
「俺は峰岸に幸せになってもらいたい、もちろん沙奈ちゃんにも。そのための協力なら少々、面倒でもやりますよ」
「…起きていたんですか?」
「いや、目が覚めた。で、また寝るから」
再び目を閉じた篠崎はそれ以上なにも言わなかった。
私もベッドに入り、目を閉じる。
今日は何も考えずに寝てしまおう。
優しすぎる上司に甘えて。
明日から峰岸のいない生活に耐えられるだけの体力を保持しておかなければ、
嘘なんて、つけない。
篠崎を巻き込んで峰岸に嘘をつこうとしているなんて情けない。
私が最も嫌いな嘘を、大好きな人につこうとしているのだから。
アノ人は、私に嘘をつき続けた。
酷く傷付けられた、最低の思い出。
そう忘れもしない、高校3年生の夏。
全ては始まった。