愛のない部屋

オムライスを一口食べた、峰岸の顔を見る。


「……」

「……」



なんだ、この沈黙。

不味いのなら、そう言えばいいじゃない。



「俺の好物はオムライスなんだ」


やっと口を開いたと思ったのに、味についてのコメントではなかった。


「だからオムライスには少し、うるさい方」


「へぇ」


冷めない内にオムライスを口に運ぶ。

美味しいとか、不味いとか。
もうどうでも、いっか。



「でもコレは美味い」


「どれ?」


「コレ、」



私の作ったオムライスを指差された。



「お世辞?」


「おまえにお世辞使う義理はないな」



喜ぶべきなのに、何故かムカつきます……。



「黙って食べれば?」



いくら美味しいものでも、嫌味を飛ばし合っていたらちっとも美味しくない。



「せっかく、褒めてんのにな?」


「どうせみんなに言ってるんでしょ」



男の言葉なんて信用できない。



「みんな、って誰?」


「そんなの私が知るわけないでしょう」


「ひとつ聞いていい?おまえの中での、オレって。どんな奴?」



峰岸はスプーンをおいて、真面目な顔をした。

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