愛のない部屋

それは悲しい昔話


両親がいないことを引け目に感じ、優しくしてくれた周りの人間すら信じられなかった
――高3の春、


クラスが変わると共に担任の教師も変わったけれど、どうでも良かった。

適当に授業を受けて適度に試験勉強を頑張り、高校を卒業すればそれで良いと思っていたのに。



「大学生に行く気は無いの?」



二者面談で、そう尋ねられた。



教師という立場でふんぞり返っている、そんないい加減な奴だったのなら相手にすることもなかったのに。


少年のような笑顔でいつも生徒とサッカーをしていた。冗談交じりの先生の発言にクラスの雰囲気が明るくなり、それでいて時に厳しい人だった。


数学を担当していたが公式を伝授するのではなくて、身近な例や公式が成立するわけを証明をしてくれたりと、分かりやすい授業を展開していた。




「無口だなぁ…、」



そんな立派な先生さえも面談中に一言も口を利かない私に呆れた様子だ。

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