愛のない部屋
太陽が昇るまですっかり眠気の覚めた私の話に付き合ってくれた。
どちらともなく布団に入り、それから10時間近く眠ったと思うのに、篠崎はいっこうに目を覚まさなかった。
規則正しい寝息が聞こえる。
明後日は仕事なのだし、いつまでも此処にいるわけには行かない。
アパートも探さなくてはいけないし、それから……
洋服やその他身の回りの物も、
峰岸の家に取りに行かなければならない。
「はぁ」
溜め息をついて仕方なく起き上がる。
いったん家に戻り、持てるだけの荷物を取りに行こうと決めた。
「篠崎さん」
タイミングよく寝返りをうった篠崎に声をかけても、反応はない。
長い睫毛と、筋の通った高い鼻。
私とは釣り合わないと、誰もが笑いそうだ。
なにより私自身、笑えてしまう。
「いってきます」
聞こえていないことは承知だが、一応伝えておく。
峰岸の元へ行くことには勇気がいる。
本当なら篠崎について来てもらいたいが、そこまで迷惑をかけてはいけないだろう。