愛のない部屋
初めて行ったお祭り。
射的の景品であるライオンのぬいぐるみ。
ーー峰岸からの贈り物。
本当なら置いて行った方が良いのだけれど、紙袋にそっと入れた。
ライオンを見て感傷に浸ることもあるだろうけれど、やはり思い出の品として傍に置いておきたかった。
未練がましいな…。
「昨日、どこに行ってたんだ?」
「え?」
開けたままのドアから峰岸の声が聞こえた。
「滝沢さんのとこだと思ってた…」
「あ。うんと、…」
篠崎さんと一緒にいました。
そう言わなくちゃいけないのに。
――付き合うことになりました。
きっぱり言い切らなければ、駄目なのに。
言葉が続かない。
「さっき篠崎から連絡が来た。おまえが来る少し前だ」
「篠崎さんから?」
「ああ。おまえが荷物を取りに来ることと――、付き合うことになった、という報告をされた」
峰岸はどんな顔をしているのだろう。
それを確認する勇気はない。