愛のない部屋
「なにも思ってない」
「つまり眼中にない、ってことか?」
「そう」
峰岸のことを分析する意味が分からない。
だいたい私が持っているモノサシで、人間の全てが計れるなんて思っていない。
外側を計れたとしても、それがどうしたというのだ。
もし仮に峰岸についての情報を私が得ようと思ったならば、間違いなく内面的なことが知りたくなるだろう。
「ホントに性格悪いな」
「アンタに良くして、なんになるのよ?」
会社の上司と上手く付き合うことは、地位の確立と給料に関わってくる。
それじゃぁ峰岸の機嫌を損ねたら?
たぶんこの家にいられなくなる。追い出されて、路頭に迷う。
まぁビジネスホテルに行けば良いのだから、大した問題じゃない。
「滝沢さんにはそんな態度、とらねぇじゃないか」
タキの名前を出された。
「タキは特別だから」
オムライスをさっさと完食し、麦茶を飲み干す。
「アンタとタキは違う」
私は言うと同時に立ち上がった。
面倒くさい男。
食事する時くらい、黙って静かにできないのか。