愛のない部屋
第3章
篠崎の想い
時が経つことを本当に早いと感じる。
峰岸の家を出てからもう1週間になる。
あれから顔を合わすことはない。
旅費や家賃などまだ返済できていない分を封筒に入れてきた。
「そんなもん自分で返せば良いよ」
タキは封筒を受け取ってくれない。
「舞さん、お願いします」
並んで座る美男美女に必死に頼み込む。
お金の貸し借りはきちんとしたい。
借りをつくりたくない。
"対等でいたい"と言った言葉を峰岸はまだ覚えていてくれているかな。
そもそも隣りに並ぶどころか、今の私たちは別々のところに向かっている。それが良いことなのか悪いことなのかは分からない。
「もう峰岸とは会わないの?」
珈琲を飲みながら、タキは寂しそうに言う。
「俺は舞と結婚すると決めた時、真っ先におまえの顔が浮かんだ」
「私?」
「渡米すると聞いたら、おまえはまたひとりになってしまうと殻に閉じ籠るだろう?」
遠くへ行くと聞いた時は確かにショックだった。
いつかはこうなると覚悟していたのに、心が揺らいでしまったけ。
でも峰岸が傍にいてくれた。