愛のない部屋
「舞のことは好き。でもおまえを置いてはいけないと……」
「それって同情?」
落ち着いた雰囲気のカフェで私の声が冷たく響く。
初めてくるカフェだ。
「同情じゃないよ。これもまたひとつの愛情」
ひどく真剣にタキが言うもんだから、思わず視線を逸らした。
舞さんは微笑んでいるだけで口を挟まない。
「峰岸はおまえを気遣って、一緒に住むことを快諾してくれたんだよ」
快諾?
私は物凄く嫌な態度をとられたんだけどな。
最初は迷惑そうな態度ばかりとられて、録に会話もできなかったし。
「峰岸がいたから俺は舞と幸せになる道を真っ直ぐに進めたんだよ」
「……なんか私がお荷物みたいな言い方だね。邪魔者みたい」
刺々しい言葉。
タキに対してなんという態度を取っているんだろ?
イライラはカルシウム不足?
「違うよ。おまえは俺にとって家族だから、心配なだけ」
――家族?
「俺たち血は繋がってなくても、強い絆があるよな?」
家族と呼べる存在を見いだせなかった私を、タキは受け入れてくれた。
タキがいなければあのまま殻に閉じ籠り続けてたであろう私は一番、大切なことを忘れそうになっていた。