愛のない部屋
疲れてるのに、私のせいで喧嘩ばかりでごめんね。
「アンタはたぶん優しい奴でしょ?」
今度は峰岸が訳が分からない顔をする番。
「今日分かったよ。冷たい奴だと思ってたけど、タキが認めるくらい優しい男」
「……」
顔を合わせれば口論になるのだけれど、お互いに口数が増えてきたことも事実だよね。
"空気"であると認識していた2人の関係が、食卓で向き合うことなるとはーー
「でもこれ以上、優しくしないで。私を甘やかさないで」
本当は弱くて脆い女。
そんな醜態をさらしてしまうような、優しい場所は求めてない。
だって私はいつも強くありたいから。
「俺、優しくないぞ?」
「嫌な女を傘に入れることは優しさじゃないの?」
「違うよ。それはただのお人好し」
「……」
やっぱり変な奴。
涼しい顔でこちらを見る、キラキラとした瞳。
峰岸のその瞳を綺麗だと思う。
本人には口が裂けても言わないけど。