愛のない部屋
サヨナラだ、
あの土砂降りの雨から、
ちょうど一週間が経った。
「おはよう」
眠い目を必死に開けながらリビングに行くと、既にワイシャツを着た峰岸が慌ただしく動いていた。
最近は最低限の会話をするようになった。
「今日も仕事なの?」
本日はカレンダーが赤くなっている日です。
「おはよう。休日出勤」
峰岸は腕時計をチラ見すると、ちょうど焼けたパンを頬張る。
そしてパンを口にくわえながらネクタイを身につけた。男性の身支度は素早い。
珈琲でも煎れようとキッチンに立ち、峰岸に声を掛ける。
「飲む?」
「時間ないから良い」
同じ会社に勤めていてものんびり休日を満喫できる者と、そうでない者がいるなんて。
世の中、どこまでも不公平。
「じゃぁ、」
「うん」
お湯を沸かしながら、峰岸を見送る。
"いってらっしゃい"
"気をつけてね"
そんな言葉も出ない、曖昧な関係が続いている。
相変わらずな私たち。
出会った頃と比べて、根本的なことはなにも変化していないけれど息苦しさを覚える回数は少なくなっていた。
慣れたのかな。