愛のない部屋

「社内恋愛は楽なようで楽じゃないよ」


「どういう意味ですか?」


社内恋愛のデメリットなんて考えたこともなかった。


「峰岸にとっては仕事とプライベートは別物だろう。例えば付き合いで峰岸は同僚と飲みに行くかもしれない」


「別に良いんじゃないですか」



飲みに行くことで、とやかく言うくらい相手を束縛するなんてお互いに疲れると思うけど。


「そういうことが何回かあって、その相手が女性だったらどうする」


「……」


「君はその女性のことを当然、社内で見かける訳だよ。色々、考えちゃわない?……これが違う会社だったらまだ気にならないよね。だって君は相手がどんなに素敵な女性か知らないのだから、まだ不安な材料は消し去れる」


まるで峰岸の同僚に優秀な女性がいるかのような言い方。


「ね?色々と大変だから、それくらいは覚悟してね」


「…覚悟ならできています」


本当にできてる?

マリコさんと峰岸がヨリを戻すことになったら、別れる覚悟。

峰岸が私のことをもう一度好きと言ってくれたなら、素直に受け入れる覚悟をーー。

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