愛のない部屋
最悪なパターンの覚悟はきちんとしないとね。
「沙奈ちゃん、その覚悟を忘れちゃ駄目だよ?これ以上、峰岸が傷つく姿を見たくないんだ」
篠崎は峰岸の味方であって、私の味方なのだ。
峰岸の不倫のことをどう受け止めたら良いか。いずれ篠崎に相談しようと思っていたけれど、やめにしよう。
篠崎の口から峰岸の悪口は聞きたくないし、
中立な立場の彼に話したところで、解決する問題ではないだろう。
「私たちは一緒にいることでお互いを傷付けあってるみたいです。でもその傷を舐め合って生きることが幸せへの道かな、って。最近、思うんですよね」
「幸せのカタチは、人それぞれだからね」
篠崎は笑い、私の肩を叩いた。
「君たち2人が上手くいきますよーに」
「……」
ふざけたように言い残し、篠崎は会議室を出て行った。
「どうか篠崎さんの恋も成就しますように」
誰も聞いていないことを知りながら、声に出す。
まだ疑問が残っている。
篠崎は本当に、私のことが好きだったのだろうか。