愛のない部屋
篠崎に迷惑ばかりかけて頭が上がらない。
「峰岸からはおまえが駅に来ないと怒鳴られ、マリコからは峰岸が何処にいるのかと質問攻めだぜ?」
「……峰岸とマリコさんは一緒にいるんじゃないんですか?」
「はぁ?アイツはおまえを駅で待ってるよ」
「今も?」
「当たり前だろ。おまえが来るまで、駅にいるつもりだよ」
どうして峰岸はまだ駅にいて、私を待つ必要があるのだろう。
「電話かけても繋がらないと峰岸が言ってたぞ。ちなみにマリコはまだ会社のロビーにいる」
「そうですか……私もさっきマリコさんとお会いしました」
「だから?」
冷たい声で突き放される。
「峰岸を選んだのはおまえだろ?」
「……でも峰岸はマリコさんを選んだ」
だから私の一方通行な恋になってしまっている。
「なら奪い返せよ。私だけを見てくれないなら、篠崎さんと付き合うとでも言ってみたら?」
「……」
「アイツ、焦るだろうなぁ」
いつもの優しい声に戻り、安心した。
「恋は駆け引きだよ?君が行動しなくちゃ、なにも変わらない」