愛のない部屋
「私が好きだからマリコさんには恋愛感情がないの?違うよ、峰岸は……」
……言わなくちゃ。
「……峰岸はホントはマリコさんが好きなのに。私を好きだと思い込んで、逃げてるだけだよ」
『思い込みだと?なにを言ってるのか分かってるのか?』
「……」
『俺のおまえへの気持ちまで疑うのか?』
疑っているというより、恋や愛を信じることが未だに怖いのかもしれない。
『俺の言葉が信じられないのか?』
「人はみんな嘘をつくから」
私だって簡単に嘘をつくような汚い人間になってしまった。そんな私自身を信じられないのだから、もう全てを疑ってかかるしかないのだ。
『そんなんじゃおまえは、一生独りだぞ』
「……」
ひとりぼっちの夜には慣れっこ。寂しいと思ってしまう心を捨て去れればいいのにね。
『俺のこと信じて。そしたら……』
「信じたくない」
否、信じられない。マリコさんの影に怯えながらする恋愛は私には荷が重すぎる。そもそも峰岸の彼女という重役は務まらない。