愛のない部屋

幸せな日に口に出して言えることじゃないけれど。

心のどこかで舞さんに嫉妬していた。タキに必要とされている彼女を、羨ましく思えていたんだ。

でも舞さんも沢山悩んでもがいていると知って、初めてその恋を応援したいと思った。

彼女はタキの結婚相手に相応しいと素直に認められたんだ。


「そんな恩人の沙奈ちゃんに、こんなこと言うのは失礼かもしれませんが……」


「なに?」


舞さんは幸せな顔を歪ませて、言い放った。


「沙奈ちゃんは、好きな人とちゃんと向き合っていますか?」



ズキリと胸に、見えないなにかが刺さった。


「向き合う強さを持っているのに、それをせずに逃げている沙奈ちゃんは、カッコ悪い……」


「……」



言われて嫌なことだったが、怒りはなかった。
舞さんだって言いたくなかったはずだから。


「……もう終わりにしようと決めたんです。舞さんには偉そうなこと言ったのに、ごめんなさい」


3ヶ月前に幕を下ろした恋を今更どうこうするつもりはない。

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