愛のない部屋
「好きだ。沙奈が好きなんだ」
久しぶりに名前を呼ばれ、胸が締め付けられる。
「行くなよ、ずっと俺の傍にいてくれ」
「……」
3ヶ月前、割りとあっさり別れの言葉を口にした男とは思えない程の必死さに驚く。
「俺を信じられないなら、信じて貰えるように努める。この想いは本物なのだと、一生かけて証明するから」
額に汗をにじませて、真剣な顔で言われた。
少し髪、伸びたかな…。
私は3ヶ月ぶりに話をする峰岸のことを冷静に見ることができていた。
そう今日の私は冷静だ。
「ごめんなさい」
「……」
幸せな新郎新婦を見て、一時的に気持ちが高揚しているだけだ。明日になったら、気が変わっているかもしれないよね。
「雰囲気な流されるなんて、アンタらしくないよ」
「……」
「あんなお似合いな2人を見せつけられたら、私だって結婚したくなっちゃうもん。今まで結婚願望なんてっ――――!」
突然、
峰岸に抱き締められた。
離れることを許さない強い強い力が私を包む。
懐かしい峰岸の香りがした。