愛のない部屋

「どうして俺から離れようとするんだ」


頭上から低い声が聞こえる。

3ヶ月間、聞けなかった大好きな声だ。


「俺にどうして欲しい?一生近付かない方が良いか?それ共、傍にいても良いか?」


それには答えず、強い力から逃れようと試みる。

3ヶ月も経った後で、峰岸はどうしてこんな行動に出たのか理解できない。




あの誕生日の日に、サヨナラなんて残酷な返事をせずに駆け付けて欲しかったというのが本音だ。


でも峰岸は訪ねて来なかったから
それが答えだと、納得しようと思ったのに。



「どうしてこんなことするの……」


「沙奈が好きだから」


「うそ」



胸から顔を上げ、峰岸の顔を睨む。


「アンタはマリコさんが好きなんでしょ」


不倫という重荷を背負ってまでした恋愛は価値があるのかそれ共、懺悔すべきなのか。



「マリコとはもう二度と会わない」


そう宣言した峰岸の顔はどこかすっきりしているように見えた。


「別れたの?」


あっちが駄目になったからコッチに来たの?アンタにとって私はその程度の女ってこと?

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