愛のない部屋
もう終わったことなのに、どうして感情が渦巻くのだろう。
「最初に言ったはずだ。親権を勝ち取るための手伝いをするつもりで。精神的に不安定だったから少しの間、傍にいた」
ねぇ峰岸、それじゃぁ私がどんな理由をつけたらアンタは私の傍にいてくれるの?
「親権は結局、父親が勝ち取った。マリコもまだ完全には吹っ切れてないようだけれど、俺はもう――自分の気持ちに嘘をつき続けることに疲れたんだ」
同じだね。
私も自分の気持ちを偽り、峰岸から離れたけれど。
今こうして抱き締められていると、その決心が鈍りそうで怖い。
「マリコを助けたいと思ったのは、一度でも愛した女だから。それが理由だったけれどただの偽善だと気付いた。良い顔をしたかっただけなんだ。おまえの言う通り、中途半端な一面もあったし」
でもさ、そう早口で付け加える。
「おかしいよな。付き合っていたのは過去のことなのに今更、俺が出て守ってやろうなんてさ。おごましいよ」
「……」
「酷だったかもしれないけれど、マリコにはっきり言ったんだ」
なにを?そう尋ねる前に、峰岸は言葉を続けた。
「これからは好きな女のために、生きたい」
ってさ、宣言してきた――
峰岸の力強い言葉に、胸が熱くなる。