愛のない部屋

「ふぅん、そんなことを言われたんだ」


自動販売機の前で篠崎は楽しそうに笑う。


「どれにする?俺は…珈琲かな」



おごってくれるらしい篠崎に無難なお茶を指さす。


「アイツ、なかなか素直にならないからなぁ。この3ヶ月間、飲みに行ってもさ。すげぇ暗いんだよ……どうぞ、」


「ありがとうございます」



お茶を受け取り、篠崎の話しに耳を傾ける。


「マリコのこと、見捨てられなかったのもアイツらしいと俺は思うよ。俺なんか冷たい人間だからさ、別れた女にそこまで尽くせないもん」


別れた彼女に優しくする男と、そうでない篠崎。
どちらが良いか、今の私だったら"後者"と即答してしまう。


「でも未練があったら…」


「峰岸がマリコに未練?ありえねー。おまえ、ちゃんとアイツのこと見てるの?」


頭をかきながら、面倒臭そうに篠崎は言う。


「おまえのこと好きで仕方ないですオーラ、出してるっしょ?」


そんなオーラ感じないんですけど。

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