愛のない部屋
2つの真実
少し残業をして、峰岸の家へと直行する。
篠崎からの情報によると峰岸は定時に上がったらしい。
窓から明かりがもれていたので、少し緊張した。
今、その胸に飛び込んだら
私を受け入れてくれるのか不安で。
インターホンを押すことすら躊躇っていた。
ーーと、突然ドアが開き、
避ける間もなく鼻をぶつけることになった。
地味に痛い……。
「沙奈――」
峰岸は慌てて飛び出してきたようだ。
これから出掛けるの?
待って。言いたいことがーー
「あ、あのっ……!」
鼻をさすりながら、この状況を説明しようとする。
「篠崎から連絡あってさ。沙奈がうちに向かってる、って聞いて。迎えに行くとこだったんだよ」
峰岸が私の鼻に触れた。
「痛い?大丈夫?」
優しい声で尋ねられ、大げさに頷いた。
「少し赤くなってる。ごめんな?」
「峰岸……」
痛みなんてもう感じてない。
こうして普通に峰岸と会話ができていることが、なによりも嬉しかった。