愛のない部屋

小さく息を吸ってから、呟くように言う。

「私も……したいかも」


「えっ?」


聞き返さないで欲しい。
恥ずかしいのだから……。



「だ、から……っ、ん」


最後まで言わせては貰えずに、唇が重ねられた。

ついばむようなキスから、徐々に口内を侵されていく。


「ちょっ……」


さすがに抵抗する。

私は離れていた時間を埋めるような優しいキスをしたかったのに。
こんなキス、知らない。


「黙って。誘ったのはそっち」


一瞬だけ離れた唇は、更に深くなる。

こんな荒々しい行為は慣れてない。



「んっ……」



鼻にかかるような甘い声も、私から出たものだなんて信じたくないというか、信じられない。


しばらくして離れた唇。


やっと、離れた…。


「悪りぃ」



峰岸の熱いキスに応える余裕はなかったけれど、離れた距離を埋めるには、手っ取り早い手段だったのかも。


なんて下を向きながら、思っていた。



このひとときを幸せと呼ばずしてなんと呼ぶのだろう。

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