愛のない部屋
「他の男と仲良く肩並べて、笑ってたんだぞ?すげぇ、ムカつく」
「はぁ……」
「結婚したばかりなのに、もう浮気してやがるんだぜ?」
「肩並べて笑ったくらいで、浮気には……」
「いや、あの雰囲気は親しげでさ。絶対、男は舞に気があると思うぞ」
タキの嫉妬心丸出しの愚痴を、呆れ顔で峰岸は聞いていた。もはやこちらの意見には耳も貸さず、独走体制。
それに暴走気味。
「滝沢さん、少し落ち着いて下さい」
「浮気現場を目撃したんだぞ?落ち着いていられるはずがない」
何故、こんな状況になったのかといえば
舞さんと痴話喧嘩になったタキが、乱入してきて。
キスの余韻に浸る暇もないまま、訪問者を知らせるチャイムが鳴ったのだ。
「ていうか、なんで沙奈がいるんだ……」
やっと私の存在に気付いた様子のタキは、勢いよくソファーから立ち上がった。
私は珈琲をマグカップに注ぐ手を休めずに答える。
「峰岸に話があって」
「もしや……俺、邪魔だった?」
邪魔ではないけれど、タイミングが悪かったようです。