愛のない部屋
私が口を開くのを待っている2人は微動だにしなかった。静まり返った室内。
「私も――」
すき、とは付け足せなかった。
タキは笑い、峰岸はほっとしたようにソファの背もたれに寄りかかった。
「良かった、良かった」
なぜか拍手をするタキに手招きされた。
「さ、お祝いの酒でも飲もうか」
「舞さんのことはいいの?」
タキの問題はなにも解決してないはずなのに。
「まぁ冷静に考えたら、アイツが浮気なんてしないよな。俺みたいないい男、余所にいるわけないじゃん」
そう言って自己解決してしまった。
「で、沙奈はまたここに戻ってくるの?」
いつの間にか真顔になった峰岸に、そう尋ねられて私は首を縦に振った。
「よっしゃ」
ガッツポーズをした峰岸も、タキと同じように机の角に足をぶつけた。
苦い顔をした峰岸に言う。
「タキと峰岸って、似てるね」
二重瞼で目が大きいところから、鼻筋が通ったところも似てる。
やわらかそうな髪も同じ。
「沙奈にまだ言ってないんだ?」
「なにを?」
タキの意味ありげな言葉に、峰岸は渋い顔をして頷いた。