愛のない部屋

「それから母親にずっと育てられてきて、父にも滝沢さんにも会うことはなかったんだけど。マリコのことで悩んでいた俺は、友達の知り合いであった弁護士の滝沢さんに相談したんだ」


運命の再会を果たした2人。


「俺たちが兄弟だと最初に気付いたのは、滝沢さんだった」


「親父から峰岸のことは聞いていたんだ。俺は一人っ子なんだけど。遺産は峰岸にも分けたいという希望があったみたいで、俺もそれを承諾したんだ」


滝沢さん、峰岸――兄弟であるはずの2人の呼び名に違和感を覚えるが、離れていた時間が多いのだから、仕方ないことなのかも。



「まぁまたこの話は後日な。今は峰岸と沙奈の話をしようか」


仕切り直したタキ。

ただ話題が変わるその前に、聞きたいことがあった。


「峰岸」


「なに?」


「マリコさんとの不倫、後悔してないの?」


過去の恋愛にとやかく言う資格なんて無いけれど、聞いておかなければならない気がした。



「マリコと付き合ったことに、後悔はしてないよ」


「そう……」


聞いたのは私の方なのに、結局聞かなければ良かったなんて思ってしまう。乙女心は複雑なんです。私が乙女なんて笑っちゃうけど。

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