愛のない部屋
「俺がマリコの大きな嘘に気づければ良かったんだが。アイツの旦那が先に気付いた。……後はおまえが知っている通り、俺が訴えられたんだ」
「なんで?アンタは知らなかったわけだし、それ以前に悪いのはマリコさんじゃない」
マリコさんが全て悪いのに。
騙して峰岸と付き合う気分はどうだったのだろう。私ならいつバレるか分からずに、常に冷や汗を掻いてそうなものだけれど。
「……マリコは旦那に、全ての責任は俺にあるかのように話しを作ったんだ」
「そんな……」
昔のことを話す峰岸は後悔と苦しみが入り交じった表情をしていた。
峰岸が不倫を望んだなんてこと、どうして信じてしまったのだろう。
誰よりも誠実な男なのに。
「ひでぇ話だよな。峰岸がマリコをたぶらかしたという話しになってたんだぜ?ま、最終的には俺があの女の嘘を暴いてやったがな。弟を助けられて、やっと一人前の弁護士になった気がしたんだ」
「滝沢さん……」
ソファの上で胡座をかくタキはどっしり構えていて。きっと峰岸の目にも、頼りになる兄として映っていることだろう。