愛のない部屋
最終章
キミガスキ
急展開を迎え、ついていけない頭。
溶けてしまうような口付けに、きつく抱き締められた身体。
それも此処は峰岸の家でおまけにベッドの上。
シチュエーションは最高だけれど、心がついていかない。
「なぁ、そんなに固くなるなよ」
顔に峰岸の吐息がかかる。それだけでビクリと反応してしまうなんて……。
「今夜は隣りで寝るだけで、許してやるって」
「……」
「早く寝ないと、次は襲うよ?」
おかしそうに笑う峰岸は相変わらず私を抱き締めたまま。
「沙奈、おやすみ」
「……おやすみ」
こんな体勢で眠れるものかと暗闇で目を開けたまま整った顔立ちを凝視する。
目が閉じられているせいか、余計に長い睫毛が目立つ。
「なに?」
突然目を開けた峰岸と至近距離で顔を見合わせた。
「眠れないの?それ共、寝たくない?」
「少し、話をしたい……」
このまま寝て朝を迎えるのには勿体無い気がして。
「なにを話そうか」
峰岸は私の髪を掬いながら笑った。