愛のない部屋
「タキと兄弟だなんてビックリした……」
数時間前に聞かされた真実は未だに信じられないし、なによりそんな気配を見せなかった2人。
「血が繋がっていると聞いた時は、困惑もしたけれど。でも今は滝沢さんと同じ血が流れているということは、素晴らしいことなんだと思えるよ」
「うん」
「でも、俺は父親を許せない」
「うん……」
タキにとっては良い父親だったかもしれないけれど、峰岸の立場からは最悪な人だ。
「私も私を置いて行った両親を許すつもりはないよ」
「沙奈は両親に会いたいとは思わないの?」
峰岸の真面目な質問に、首を縦に振る。
「思うはずがないよ」
あんな家族、こっちから捨ててやると決めた。
どんなことがあっても私はあの人たちを探さないし、会いたいとすら思わないだろう。
「それじゃぁ、沙奈の両親に俺は挨拶できないね」
「……」
「娘さんを下さい、という土下座は誰にすれば良い?」
「峰岸……?」
「いずれ俺たち、結婚するだろう?」
当然のことのように言われ、安心感が芽生える。
結婚。まさか自分の人生にその2文字が出てくるとは、想像すらしていなかった。