愛のない部屋
欲しい言葉を照れもせずに与えてくれる峰岸の胸に、寄り添える幸せ。
もう十分すぎるほど幸せだ。
「沙奈には家族がいないかもしれないけれど、今から作れば良い」
「峰岸は私の家族になってくれるの?」
「当たり前。俺はもうおまえを離さないよ」
「……ありがとう。自分に自信が持てない私を"好き"と言ってくれるのは峰岸くらいだよ」
冗談混じりに本音をさらけ出す。
峰岸の隣りを歩く女性は本当に私で良いのだろうか。
「こんな良い男を捕まえたんだ。沙奈は自信を持って良いんだぞっ」
おちゃらけた言葉の中に、優しさが見える。
「でもさ、いくらカッコつけても。同じように俺も不安」
「なにに対して不安なの?」
「沙奈が逃げないか、不安だよ。俺の独占欲は半端ないから」
不安ばかりの道を私たちは進む。
それでもその不安を掻き消す以上の"幸せ"を掴めると信じているからこそ、前に進みたいと思うんだ。
「峰岸も私から逃げないでね」
「ばーか」
穏やかな夜は、ゆったりと過ぎていく。