愛のない部屋
このまま峰岸の体温を感じながら、朝を迎えるなんて素敵なことだけれど。
その前に確認したいことがある。
私の聞こうとしていることは今の甘い雰囲気を壊すことになるかもしれないけれど、胸に溜めておくことはできない。
「峰岸っ」
至近距離では少し大きすぎる声だったようで、峰岸が驚いた顔をする。
「どーした?」
上半身を起こし、私の顔を覗き込む峰岸をじっと見つめる。
「マリコさんのこと、ちゃんと聞きたい……」
私たちの関係が進展しない理由のひとつであった出来事を無かったことにして知らん顔で幸せを掴むことは、本当に幸せなことではないから。
「……終わったこと、それじゃぁ駄目?」
「うん、駄目」
きっぱり言うと、峰岸は更に顔を近付けた。
「…っ……」
峰岸の唇が頬にあたり、キスされる。
私を惑わすその行為に流されそうになってしまう。
ダメだよ。
「…そうやって私を誤魔化すの?」
可愛げのない女でごめん。
でもあなたと向き合うって決めたから。
「誤魔化すつもりはないよ?俺がしたいだけ」
今度は峰岸の唇が下におりていき、首筋にくすぐったさを覚える。
「峰岸はマリコさんが結婚していることを知らなくて、付き合っていたの?」
タキが教えてくれたことを再確認すると、やっと峰岸は私から離れた。