愛のない部屋
サイドランプを少し明るくする。
「沙奈が聞いて良い気持ちがする話じゃないよ」
隣りに寝転がり天井を見ながら、自嘲気味に笑った。
「それでも聞きたい?」
私が聞こうとしていることは、峰岸の過去に干渉することになる。
私が不愉快になるとかならないとか、それ以前に峰岸は私に話して嫌な気分にならないのだろうか。
元カノのことを詮索してくる女はうざい、
いつか篠崎がそんな愚痴をこぼしていた覚えもある。
「俺は別に話しても良いよ。もう終わったことだし、今が幸せだから」
こちらの考えを読みとったのか、峰岸がそう言ってくれた。
「やっぱり聞きたい」
「うん……」
峰岸は私の方を向いた。
「付き合っていても気付かないくらい、アイツは自然だったよ。結婚指輪もなく、その指には俺があげた指輪がちゃんとはまってた。俺が会いたいと言えば、日時関係なくいつでも会えたしね。ただ実家だということで、マリコの家に上がったことはなかったけれど」
その内容に、やはり不快だと感じてしまう。
マリコさんと峰岸の幸せだった過去に、私が踏みこむことはきっと、
私自身を傷つけることなのだろう。