愛のない部屋

峰岸の過去をも受け入れたい。
だからちゃんと聞かないと。


「結婚してくれと、俺は言った」


更に私の心に追い打ちを掛ける言葉が聞こえてきた。



「そしたらマリコは、2つ返事で了承したんだ」



返事はできない。相槌をうつ余裕もない。

ただ峰岸の言葉を、耳を塞がずに聞くことで精一杯だった。


「それからすぐだよ。俺は旦那の存在を知り、そして訴えられた」


淡々と進む話。


「マリコは俺と結婚するために、旦那との別れ話を切り出したらしい。そこで不倫が発覚したんだ。訴えられた俺は滝沢さんに助けられ、どうにか丸く治まったけれど」


マリコさんは旦那さんより、峰岸を選ぼうとしたのか。そして結婚している事実を峰岸には告げず、自己解決をしようとしていた。



「俺は旦那にマリコには2度と近付くなと言われ、それを受け入れるつもりだった。どうして俺がこんな目に合わなければいけないのか分からなかったけれど、それでもマリコのことを憎いとは思えなかったよ。嘘をつかれていたとしても、アイツは俺のために動いてくれていたと思うからさ」




複雑な気持ちになる。



私は、

マリコさんのことが憎い、

峰岸の口からそんな後悔の言葉が出ることを期待していた?

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