愛のない部屋
都合の良い言葉を聞きたいだなんて、私も堕ちたものだ。
恋は人を輝かせ、そして人の心を醜くするものなのかもしれない。
「後は沙奈も知っている通り、滝沢さんと舞さんと旅行に行った時にマリコから連絡があって。会いたいと言われて、会った」
そう峰岸の背中を押したのは、他でもないこの私。
「沙奈はそのことを後悔してる?」
……その質問に答えなければいけないのだろうか。
この嫉妬にまみれた薄汚い感情を、峰岸に晒さなければならないのだろうか。
「峰岸は?」
反対に聞き返すことで、逃げた。
「俺は…後悔してない」
やっぱりね。そう言うと思ったよ。
「苦しい時もあったけれど、結果として幸せを掴めたから」
「そうだね」
「でも今、此処におまえがいなかったら返事は変わっていたと思うよ。すごく後悔して、今度こそマリコを恨んでいたかもしれないな」
醜い感情をさらりと表に出せる峰岸は本当に強い人だ。
「私は…後悔してるかも」
「うん、そうだよな。ごめんな」
謝罪なんて求められていないのに、そう言わせているのは私だ。
「でも大丈夫。マリコのことなんて全て忘れさせてやるから。そして俺もアイツのことを忘れるんだ」
既におまえしか見えてないし。
そんな言葉が付け足された。