愛のない部屋
昼食はサプリメントで済ませてしまう細い女性。
なにより可愛らしい喋り方(私にとっては雑音)で、どうすれば自分が美人に見えるかを知っている人。
そして、
峰岸に恋をしてる。
……なんで冷静に分析してるんだろう。一応、恋のライバルなんだよね。
両思いだからって油断できないのが、現代の恋愛。
「予定って彼女さんですか?」
エレベーターの扉が閉まろうとして、反射的に"開"のボタンを押そうとしてしまった。
だってこの空間に3人でいることは辛いのだ。
それでもここに留まる私は2人きりにしたくないという独占欲のようなものを感じていた。
七瀬は完璧に私を空気のように扱っているので、私はそれを受け入れるだけだ。彼女に無視されているのは構わないし、むしろ好都合。
だけれど2人の会話が聞こえてくるのは、とても耳障りなことだ。
「うん、彼女との約束があるんだ」
「えー。峰岸さん、ついこの間までフリーだったじゃないですかっ!」
不満そうな声に、なんだか腹が立ってきた。
「最近、やっと思いが通じてね」
峰岸まで私のことを無視して平然と答えていることもまた悔しい。