愛のない部屋
「私と彼女、どちらが可愛いですか?」
七瀬の質問に思わず、峰岸を凝視してしまう。
「ははっ、どうかな」
クスリと笑いながら、首を傾げる。
「否定しない、ってことは可愛いのは私で良いのかなぁ?」
ふざけたような物言いなのに、それでいて七瀬の目は真剣そのもの。
「うーん、ごめん。彼女の方が可愛いかな」
「……」
私も七瀬も、その答えに絶句。
「俺、どこまでも彼女一筋みたいだね」
七瀬の顔から笑みが消える。
戦意喪失の表情。
「七瀬さん、君も早く素敵な彼氏を見つけられると良いね」
上から目線の峰岸の言葉に、七瀬は顔をしかめた。
「余計なお世話です!」
さっきまでの甘い声でなく、キツイ口調。
ああ、可哀想に。
「宮瀬さん、それじゃ」
「……ええ」
唇を噛み締めている七瀬など眼中に入らないかのように、私だけに挨拶をして峰岸はエレベーターを降りて行った。
ドアが閉まり、再び閉じ込められた私は小さくため息をついた。
性格の悪い2人の会話に疲れてしまった。