愛のない部屋
「だからおまえと俺のために、気合いを入れて食事会を開くらしいぞ」
「うそ……」
「あー、面倒臭い」
机の上の書類を乱暴に脇へ投げ捨てると、篠崎は伸びをした。
「嘘でも他の男が好きだなんてこと、言うなよ。馬鹿」
「すみません……」
「恋愛ってのはさ、少し歯車が狂っただけで大変なことになるんだよ。だから気を付けろ」
篠崎さんは私を睨み付けた。
申し訳なさのせいか蛇に睨まれた蛙のように、固まる。
マリコさんに本当のことを打ち明ける勇気が必要だ。
これからの峰岸とのことをきちんと話さなければならない。
「とりあえずマリコと会って、誤解を解いて来い」
厳しい篠崎の言葉に、私は素直に頷けなかった。
「俺も一緒に行ってやるぞ?」
「え?」
意外な言葉に、すがりたくなる。
ひとりでマリコさんに会うのは、正直怖い。
「修羅場にならないように、俺が手配しますよ」
そういうの得意だから、なんて笑う篠崎は最後まで私の力になってくれるようだ。