愛のない部屋

思い返せば、

篠崎に何度、助けられたのか。



数え切れない、ほどだ。





仕事に関するさりげないフォローもあれば、


"大丈夫だよ"そう笑いながら私の失敗を許して、手直しをしてくれた。




峰岸のことでは話を聞いて貰い、あの温かい笑顔で不安を掻き消してくれた。



――今、だって。




こんな私のために、親友の峰岸を怒鳴り、拳を掲げてくれた。



いつだって、助けてくれた。




「輝だって、沙奈ちゃんのこと満更でもなさそうだしね」




マリコさんの声に、私は自然と頷いた。



「篠崎さんはいつも私のこと助けてくれます。優しくて明るくて、素敵な人です」



「そう?好きなのね?」



マリコさんの嬉しそうな顔。



うつむいた峰岸の表情は見えない。



そして険しい顔の篠崎。



みんなが私の答えを待っている。







「私は、篠崎さんのことが好きです」






パッと素早く顔を上げた峰岸と目が合う。



どうしてそんな寂しそうな目をするの?



私を裏切ったのはアンタなのに。


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