愛のない部屋
「おまえとのことはもう過去の出来事として――」
「分かってる……」
峰岸の言葉を遮り、マリコさんは小さくため息をついた。
「もう分かったから、なにも言わなくて良いわ」
「そうか」
峰岸は私の隣りに移動してくると、肩を抱き寄せた。
「俺たちの結婚式には来てくれるか?」
はっ?
誰と誰の結婚式?
「考えておくわ」
穏やかな笑みを向けられ、やっぱりマリコさんは大人な女性なのだと再認識する。
「幸せになって」
恋のライバルからそう言われ、胸が熱くなった。
「沙奈さんには守ってくれるナイトが2人もいて、贅沢だわね」
「えっ……」
「輝に少しでも気持ちが傾いたりしたら、どうなるか分かってるわよね?」
どうなるんですか?
なんて聞き返せなかった。
「沙奈は一生、俺に夢中だからご心配なく」
その言葉と同時に、手に峰岸のそれが絡まってきた。
半ば強制的に恋人繋ぎをさせられたかと思えば、ぎゅっと握られた。
「死ぬまで離さない」
その宣言は、
私とマリコさん、そして篠崎に向けたものだろう。