愛のない部屋
歯切れの悪い私の言葉を聞き逃すはずもなく、峰岸の鋭い視線が向けられた。
「アイツ、いつも良いところばっか持っていく」
「……」
「今日だって本気で殴られたし。それに俺は完全に悪者にされた」
「演技だなんて、思えなかったもの」
マリコさんとの策略に騙されて嫌な気持ちになったし、自分がどれだけ峰岸を独り占めしたいのかも、はっきりと自覚した。
「少しは疑えよ。もうなにがあっても、俺はおまえを手放さないんだから。他の女に抱きつかれるような、隙をつくるわけねぇだろうが」
「…信じてたつもりなのにね」
疑うことを放棄するくらい、ショックだったなんていう言い訳で許してもらえる?
「やっぱり過去のことにも嫉妬しちゃうみたい」
「妬かれるくらい、愛されてるのか…俺」
「うん、愛してるよ」
こんな時くらい素直になりたい。
そんな私の反応が意外だったのか、峰岸は顔をしかめた。
「そんな可愛いこと言われたら、ヤバいんだけど……」
もしかしたら私たちはバカップルなのかもしれない、なんて思って笑ってしまった。