愛のない部屋
ライオンのぬいぐるみは思い出の品だから、大切にしている。
初めてお祭りに行って、射的で取って貰った景品。どこにでもありそうで、私しか持っていないもの。
これは私のただの推測だけれど世界中を探しても、峰岸からライオンのぬいぐるみをプレゼントされた女の子はいないだろうから。
だから、すごくレア。
「不細工だよなぁ」
ライオンの顔を見ながら、クスリと笑う。
「私は癒される顔だと思うけど」
「別に俺、ライオンに癒されなくても良いもんね。沙奈に癒しを貰ってるから、もう十分だ」
「……私、癒し系じゃないと思う」
むしろ程遠い。性格だってキツイし。
「好きな女が傍にいて、癒されない男がどこにいる?」
「……」
ライオンをテーブルの上に置くと、峰岸は私の手を取った。
「今夜はライオンより、俺を見て。んで、俺のものになって」
真っ直ぐな瞳が、私を映す。
「峰岸……」
ムードの生まれた部屋で戸惑いと嬉しさを同じくらい感じていた。