愛のない部屋
峰岸の部屋に誘導され、流されるままにベッドの上に座る。
緊張?というよりは、心がついていかない。
だって――。
「リラックスして」
「うん……」
きっと峰岸がずっと前に済ませてしまったことを、私はまだ終えていない。
それを告白するタイミングが見つからなくて、どんな言葉で伝えれば良いのかも分からない。
ただただ恥ずかしい。
「沙奈」
ベッドの上に向かい合って座る私たちのすることはひとつだろうけれど、峰岸はそれを急かしたりはしない。
じっと私の反応を待っていてくれる。
強引にされたり、私の嫌がることはしないと分かってはいるけど。でも身を任せる決心がつかない…。
だって、私ーー
「はじめて?」
「……」
そんなやんわりとした言葉で聞いてくれたので、迷うこともなく首を縦に振った。
答えると同時に峰岸はとびっきりの笑顔を浮かべてくれた。大人なそれとは違う、少年の笑顔だった。