愛のない部屋
それから私は無言で手を引かれ、寝室へ誘導された。
「ちゃんと寝ないと、仕事辛いぞ?」
「うん」
「おやすみ」
「…おやすみなさい」
峰岸の胸に顔を埋めるようにして、布団をかぶる。
「峰岸、私たちはもう……家族、だよ」
婚姻届とか、挙式とか。
そんな目に見えるカタチあるものが示さなくても、心は繋がっているから。
「それじゃぁ、もう沙奈は俺だけのものだ」
「それはどうかな?」
クスクスと笑う声が、頭の上から聞こえる。
「いや俺だけのモノにさせて貰うよ。誰よりも俺はヤキモチ妬きだからなっ」
「……キャラと合ってないけど」
クールで無愛想、とにかく冷たい印象を持った峰岸はもういない。
「キャラ?まぁ公私混同はしないようにするけど。それも無理かも」
本当は優しくて誰よりも傷付きやすい繊細な人。
彼の全てがいとおしい。
「社内で篠崎とおまえが楽しく笑ってる姿を見たら、駆け出したくなると思う。俺の女に、馴れ馴れしくするな、って」
「篠崎さんとは本当になんでもないんだよ?」