愛のない部屋
番外編
社内恋愛
よく晴れた朝。
少し前まで…いや、数歩前まで気分は爽快だったはずなのに、もやもやが込み上げてくる。
ここがエレベーターという閉ざされた空間だからなのか。
いいや、気分害した理由は他にある。
甘ったるい香水に比例する、高い声。
細い腕が、峰岸の身体に絡み付く。
私は同じ空間にいること自体、嫌気がさすのだけれど、笑顔を貼りつけてきちんと会話をしている峰岸は立派な大人だ。
もしやまんざらでもない?
「今夜、予定ありますかっ?」
ほら、お決まりの文句が来ました。
モテる男の宿命とでもいうのでしょうかね。
「うん、先約があるんだ」
「え~明日はどうですか?」
「う~ん、、」
朝から疲れる。
峰岸が女の子に話しかけられる様子を見ていることが苦痛で。
篠崎さんみたいにさらりと交わしてくれるのならまだしも、峰岸は女の子たちのペースに乗せられそうになることがあるから内心、肝を冷やしている。
「やっぱり彼女に怒られちゃうから、遠慮しとくね」
「え~彼女いるんですかっ!?」
女性社員の苦痛の叫びに、私は壁を向いてそっとため息をついた。