愛のない部屋

もう一度深呼吸をする。


「ありがとう。こんなことで電話しちゃってごめんね?」


『気にするな。また何かあったら俺を頼れよ』


「うん」


私の周りには温かい人がいてくれる。
いつも助けてくれて励ましてくれる。
そのありがたみを実感しながら、電話を終えてスーパーの袋を握り直す。



後ろめたい恋だったことは認めよう。


教師と生徒という一線を越えて、愛し合った。それは罪だろうけれど、そこには確かに愛が存在していたから。

だから誰も私たちを責めないで欲しい。



「先生……」



見上げた空は、怪しい雲行きをしていた。

夕方からは雨、天気予報でそう言っていたのだからおかしくない天候なのだけど。



なぜか胸騒ぎがした。



これから何か不吉なことが起きるのを予期したかのような、不機嫌な空模様。



「まさかね……」



考えすぎだ。

たまたま会っただけで、もう二度と会うことはないかもしれないし。例え再会したとしても、なにかが変わるわけでもない。


2人が元鞘に戻ることなんて絶対にありえないことなのだから。


< 386 / 430 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop