愛のない部屋
もう一度深呼吸をする。
「ありがとう。こんなことで電話しちゃってごめんね?」
『気にするな。また何かあったら俺を頼れよ』
「うん」
私の周りには温かい人がいてくれる。
いつも助けてくれて励ましてくれる。
そのありがたみを実感しながら、電話を終えてスーパーの袋を握り直す。
後ろめたい恋だったことは認めよう。
教師と生徒という一線を越えて、愛し合った。それは罪だろうけれど、そこには確かに愛が存在していたから。
だから誰も私たちを責めないで欲しい。
「先生……」
見上げた空は、怪しい雲行きをしていた。
夕方からは雨、天気予報でそう言っていたのだからおかしくない天候なのだけど。
なぜか胸騒ぎがした。
これから何か不吉なことが起きるのを予期したかのような、不機嫌な空模様。
「まさかね……」
考えすぎだ。
たまたま会っただけで、もう二度と会うことはないかもしれないし。例え再会したとしても、なにかが変わるわけでもない。
2人が元鞘に戻ることなんて絶対にありえないことなのだから。