愛のない部屋
――別れよう。
『冗談だよね?』
――僕はアメリカに行くんだ。
『えっ?』
――向こうに婚約者もいる。
『婚約者……?』
――遊びは終わりにしよう、沙奈。
『遊び?今までのことは全て遊びだったんですか?先生は私のことなんて……』
――なんとも思ってなかったよ。
――恋愛ゴッコに付き合ってあげただけさ。
1人の少女が床に崩れ落ちる。
ああ、私だ。
かつての私だ。
好きな人にフラれた惨めな女。
私にとっては本気の恋だったのに、先生にとってはただの遊びに過ぎなかった過去。
消し去りたい過去。
「沙奈、沙奈」
先生とは違う低くて優しい声で、瞼を開ければ蛍光灯の光が眩しくて。
再び目を閉じようとすれば、ふわりと身体が浮いた。
「ソファーなんかで寝てたら、風邪引くぞ」
いつの間にか帰ってきた峰岸は私を抱えたまま寝室に向かう。
「み、峰岸……下ろして」