愛のない部屋

壁際の時計を見る。

「とにかく峰岸さんとは関係ありませんから」



こんなくだらない話に付き合っている時間はない。


「逃げるんですか」



席を立とうとした私に挑発的な言葉を寄越した女。


いくらメイクが上手くても外見だけじゃどうにもならないって気付かないのかしら。



「どうして私が逃げなくちゃいけないのよ?」


「それじゃぁ、後5分だけ話を聞いて下さい」


「3分」



訂正を入れて、仕方なく座り直す。



「峰岸さんのこと、どう思っていますか?」


「どうって?別に眼中にないわよ」



同じ家に住んでいるのだから嫌でも視界には入ってくるけど。



「峰岸さんはあなたのこと、どう思ってますか?」


「はぁ?」



どうして峰岸の気持ちを私が理解できるのよ?



「峰岸さん、私が頼めば車に乗せてくれます。でも、助手席には絶対に乗せてくれません」


「……」



ああ、大失敗。
後部座席に座れば良かった。



「なのにどうして、あなたが助手席に座っていたんですか?」


「その理由をあなたに説明する義理はないわ」



女は私が峰岸と同棲していることを知ったら、どんな顔をするだろうか。ショックで寝込んでしまいそうだわ。

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