愛のない部屋
「気になるんだったら直接、峰岸さんに聞いて。もう3分経ったから行くわ」
「ちょ……」
まだなにか言いたそうな女を残して、さっさと食堂を後にした。
篠崎が言っていた"噂"というのは、たぶん私と峰岸が付き合っているとかいうくだらないものなのだろう。
峰岸の車に乗ったことは事実で、噂が全て嘘ということは無いけれど。
私たちの間に、愛は存在しない。
「……」
どうしてこんな時に……。
開いたエレベーターに乗り込むと、壁に寄りかかっている先客が目に入った。
「何階?」
そう尋ねられた声を無視して自分でボタンを押す。
「なんで居んのよ」
「居ちゃ悪いかよ?エレベーターは社員みんなの物だろ」
峰岸はそう言って、私を見た。
「不機嫌な顔、会社では止めろよ」
「誰のせいだと思ってるの?」
貴重なランチタイムを邪魔されて良い顔なんてできるはずがない。
「誰って、俺?」
「女の子からしつこく聞かれたのよ。アンタと私が付き合ってるんじゃないか、って」
「はぁ?」
「噂になってるの、今朝のこと」
なにも知らない様子の峰岸。
問い詰められて、嫌な思いをしたのは私だけ?