愛のない部屋
一日中、痛いほどの視線を感じていた。
ジロジロと品定めするような視線が、通りすがりの人から向けられたものならば強気で睨み返してやるのに、同じ職場で働く人ともなるとそうはいかない。
私、なにを考えているのだろう?
今朝まではタキのことで頭がいっぱいだったのに。
タキのことで悩むのはいい。
でも峰岸のことで悩むなんて、物凄く馬鹿っぽい。
「眉間にシワ?」
駅のホームで椅子に座り電車を待っていると、頭上から声を掛けられた。
「タキ!」
思わず起立をし、背筋を伸ばす。
「怖い顔してたよ?」
「…会社でちょっと」
「仕事、辛いか?おまえが仕事のことで弱音を吐くとは…」
「人間関係みたい」
他人事のように言うとタキはおかしそうに言った。
「なに?人間関係で悩んでんの?他人に興味ない沙奈が?信じられん…」
「笑い事じゃないから」
冷たく言う。
タキの笑顔を見て、熱くなった胸を冷ますためにわざと冷たくーー。