愛のない部屋
ビールをイッキ飲みするタキの凛々しい横顔に、胸が熱くなる。
さっぱりとした短めの茶色がかった髪も、筋肉質のがっちりとした体型も、好きだ。
「ん?沙奈も飲めば?」
私の視線に気付いたタキはビールをくれた。
「ありがとう」
タキと共有する時間は素敵なものなのに、
目の前にいる峰岸のせいで楽しさが半減する。
「俺、酒癖の悪い女は嫌い」
「誰もアンタに聞いてない」
「可愛くねぇ女」
今度は可愛くない女、ときた。
むかつく。
「やっぱお似合い」
犬猿の仲と捉えていいであろう私たちのことを、くすくす笑うタキの目には違うなにかが見えているらしい。
お似合いだなんて、最低の褒め言葉。
「滝沢さん、俺はよく分かりません。どうしてこんな女と暮らさなくちゃいけないんですか?ここ、俺んちですよ?」
「2人はまだ気付いてないんだよ、相性の良さに。俺から見たら君たちは似てるよ?」
「どんなとこが?」
2人の会話に口を挟むと、峰岸に怪訝そうな顔をされた。
それに気付かないフリをして、タキの方を見る。
「う~ん、そうだなぁ……」
"恋なんてしないと、決めつけているところとか"
返す言葉がなかった。
峰岸も私と同じように恋愛をすることを放棄した人間だとしたら、
確かに私たちは似ているのかもしれない。