愛のない部屋
「そういう発言、ウザイ」
いちゃつく先程のカップルが前を通りすぎる。
あの人たちはただ目の前の恋愛に一生懸命なのだろう。相手を信じ愛していて。
恋を捨てた私には、それが微笑ましく見えた。
「上司に向かって、ウザイとはなんだ!」
「プライベートな時間まで上司面しないでよ」
「なぁ……、」
空気が変わった。
「俺たち結構、上手くやれてるな?」
「どこが?」
「お互い言いたいこと言いまくってさ、ラフな関係じゃん」
「まぁね」
お互いに遠慮なんて言葉は存在しない。
「こんな俺たちをなんて呼ぶんだろうな?悪友とか仲間?」
「さぁ」
「2人を表す言葉なんて、見つからなくても良いけどさ」
峰岸は私の目を見て、静かに告げた。
「ずっと一緒にいたいな」
「……」
この時点で私は峰岸という甘い密に引き寄せられた。だからガラでもないことを、口走る。
「ずっと一緒にいてあげる」
私の返事を聞いた峰岸は整った顔を歪ませて、破顔した。
不覚にもドキドキした自分がとにかく信じられなかった。