愛のない部屋
手紙が招いた嘘
「俺、なにもしなくて良いの?」
「うん」
麺を茹でる横で峰岸はミネラルウォーターをイッキ飲みする。
「座ってて良いけど」
水を飲み終えてキャップを閉めても動こうとしない。料理中に傍にいられると、なんだか気が散るんですが。
「傍にいられるのも駄目?触ったりしないから」
「あたりまえでしょ。触ったらお湯かけるわよ」
冗談に聞こえても本当にやってしまいそうだ。
他人に触れられた時、なにを仕出かすか分からない。
咄嗟の拒否反応で、峰岸に熱湯を掛けてしまわないという保証はない。
「どうしたら、おまえに触れられるんだろうな」
「私に触れる予定があるわけ?」
一歩、後退して尋ねる。
なんだ、この男。
恋はしないと言いながら、身体だけなら良いと考えているのか? そんな変態野郎だったら、殴ってやる。
拳を握ると、
「おまえに触って、俺に何の得があるわけ?」
そんなムカつく言葉が返ってきた。